このセクションでは、どのようにして事業アイデアに出会ったのか、またそのアイディアのビジネスポテンシャルを検証していったのかを聴いていきたいと思います。
この記事に書いてあること
Q. ではまず起業までの道のりを教えてください
A. 大学を卒業してからまずはリクルートホールディングスに就職しました。女性の管理職の方々も多く、その中でいろいろな働く女性と出会う機会がありました。自分も両親が共働きの家庭で育ちましたが、改めて共働き家庭の抱える悩みが世界共通であることに気づき、そういった共働きの方やその子供をサポートできることがあったらいいなとぼんやり考えていました。
その中で、自分の原体験を活用したサービスを作れないかなと思い始めたのが起業のきっかけです。
Q. リクルート在籍中からそのアイディアをいつかビジネスにしようと思っていたのですか?
A. リクルート時代も漠然とグローバル×キャリア×教育の軸で何かできないかなという想いは抱いていましたが、具現化は全く考えていませんでした。
というのも夜中から会議が入ったりするような忙しい日々の中で、仕事を辞めて時間を作らないと、自分が本当に何をやりたいのかを考えたり、またやりたいことに費やす時間がないと思ったからです。また退路を取らないと、いつか起業するかなと思いながらも、いつまでも起業をしないかもしれないという思いもありました。
そのためまずはリクルートを退職、それにより起業をする決意がつきました。辞めてから考える中ではじめて、自分の原体験を活かしたことをしようと考えついたのです。
Q. ご自身の原体験を活かしたサービスとはどういったものだったのでしょうか?
A. 私の母は、働きながら私と6歳下の妹の送り迎えをするのが難しかったため、家の近くの大学の学生寮に『娘の送り迎えをやってくれる人募集中』という張り紙を貼ったのです。それからは、毎日様々な国からの留学生のお姉さんたちが私たち姉妹を迎えにきてくれるようになり、自分たちが育った国や環境のことなど、世界のことを教えてくれました。6歳から18歳まで毎日留学生のお姉さんたちと過ごしましたが、私たちにとっては語学を教えてもらったことよりも、幼くして世界には色んな人がいるんだという多様性を体感できたことが非常に良かったと感じています。
そしてこの経験が自分たちの価値観を形成したと思っています。
こういったインスピレーションを日本の子供達にも提供できたらと思い、手軽に気軽に留学をしているような体験を作りたいと思い、今のサービス立案に至りました。
なので私の場合は、起業しよう!とか、これで成功しよう!と思ったというよりは、自分の身近にあったものや自分の価値観を形にしてみたら、気づいたら会社になっていたという感じです。
Q. 「お迎えシスター」で起業しようと思ったきっかけはなんでしたか?
A. お迎えシスターのサービスを始め、自分が先生として4人の生徒を見ている中で、その中の一人のお父様からビジネスについて聞かせて欲しいという連絡があったんです。お会いして、サービス立ち上げの経緯や想いなどを話をしている中で、実はその方がエンジェル投資家で、娘も喜んでいるしビジネスポテンシャルがあると思うから投資をしたいと申し出ていただけました。
当時は投資のこともよくわかっていなかったのですが、お話を受けてすごくワクワクした世界が広がっていくような感覚があったので、この出会いを機に、会社を設立しました。
Q. 起業を目指している高校生から、親に反対されていると言う話もよく聞きますが、会社を設立するにあたり、樋口さんは周りからの反対などありましたか?
A. 当時父はすごい反対をしていました。安定した会社を辞めて起業するのは人生最大のリスクだと言われましたね。そのため、1年の猶予を交渉し、1年経っても形になっていなかったら諦めると言うのと、税理士と弁護士は絶対つけるというのを条件にチャレンジをさせてもらいました。
実際1年で企業としてすごくスケールアップしたわけではありませんでしたが、たくさんの方から応援をしていただけたり、フィードバックをいただけたりと、1年で変化を経ながらやりがいを持って働いている私の姿を見てくれて、今では父親も応援をしてくれるようになっています。
起業に対して親が反対することも多いとは思いますが、昔と違って何千万もの借金を抱えるわけではありません。起業の経験は確実に自分の人生の糧となり、大きな教訓を得られると思っています。
Q. アイディア段階の時にはどういう人に相談していたのでしょうか
A. 私の場合まずはいろんな人に相談をしていました。いろんな人に相談することのメリット・デメリットはあると思います。メリットは様々な視点からフィードバックがもらえること。一方デメリットはいろんな人がいろんなことを言うから、混乱もするし、自分を見失いがちになる。
でも私はそこからが勝負だと思っていて、自分が揺らぎ始めた後に、それでもブレずにこのビジネスをやりたいと思えるか。私はそれを再確認できたことが、すごく良かったと思っています。
自分のアイディアをいろんな人に言いふらすことで、いろんな人がいろんな人を紹介してくれて、つながっていきました。ビジネスが大きくなるまで公開しないケースも多いとは思いますが、私はアイディアを隠さずになるべく多くの人に話した方が得るものが多いと思っています。